中山祥徳×井上ほの花×戸谷菊之介×内山昂輝×石橋陽彩×山根 綺
座談会インタビュー(後編)
さらっと本心から出た言葉だからこそ、 翔平のセリフは心に残る
――前回の座談会に引き続き、ここまでの名シーンを伺っていければと思います。まず戸谷さん演じる宇佐美翔平の名シーンといえば?
- 山根
- やっぱりあそこじゃない? 「さらっと言って」って、ディレクションが出ていたところ。
- 戸谷
- 何個かそのディレクションはもらっていたけど、朔と凛太郎が喧嘩した後、3人で歩いているときの「凛太郎はめちゃくちゃかっけーやつだって!」とか?
- 井上
- あー!
- 山根
- そうそれー! めっちゃ素敵だったな。宇佐美はさらっとカッコいいこと言う人だから。
- 内山
- そうだね。
- 井上
- 宇佐美くんに助けられている場面って、いっぱいあるよね。
- 一同
- うんうん!
- 山根
- 何か行き詰まったら、大体翔平君があの底抜けの明るさでなんとかしてくれるので。
- 戸谷
- そうそう、そこが本当にスゴい。凛太郎の家に遊びに行った回でも「小学生の頃と今ってそんなにお前変わったの?」「昔のやつら、びっくりする程見る目ねぇーよな」って。
- 石橋
- あそこ好きだー!
- 内山
- 翔平はけっこう良いことを言っているんだよね。
- 戸谷
- こういう凛太郎の心に残って背中を押してくれるような言葉は、「ただ純粋に翔平の本心として言ってほしい」とディレクションをいただいていました。だから僕も良いことを言おうと考えたりせずに、ただ素直に純粋に翔平の心から湧いてきた言葉として表現することを、大切に考えていました。
- 山根
- あと桔梗と千鳥で集まって、昴が「あのときはごめんなさい」と図書館での初対面時のことを謝るときの、「何言われたか覚えてねーわ」。昴的には絶対覚えているだろうと思っていただろうから、ああいう風に返してもらえたのは嬉しかっただろうなと感じました。昴にとってはきっと新人類ですよね。こんな人がいるんだ!?みたいな。
- 戸谷
- 自分は桔梗の生徒なのに……と気にする昴に対して、「オレらそんなの気にしねーけど」と言うのが、まさに翔平だな!と思ったセリフでした。偏見みたいなものを全然持っていなくて。
- 山根
- 素晴らしい人ですよ。こうやって周りの人の心をすっと解かしてくれるから。
- 戸谷
- 凛太郎や昴の背中を押してくれていますよね。
- 井上
- 第1話冒頭で桔梗の生徒に何か言われたときも、「オレのイケメンっぷりに照れたんだろーな」って、ポジティブで。第2話でも「オレも彼女欲しい…!!」が可愛かったです(笑)。
- 山根
- 確かに翔平くんはカッコいいし、可愛いんだよね。
- 戸谷
- ね! サプライズも得意だし(笑)。
- 井上
- 歌上手いし。
- 一同
- 上手い上手い!
- 山根
- 翔平が意外と歌上手いキャラで。
- 中山
- 89点で。
- 山根
- でも私はあそこ、戸谷くんの歌の上手さが隠しきれていないなと感じました(笑)。“89点で歌おうとしている戸谷くん”みたいな、戸谷くんのポテンシャルが滲み出ちゃってたよ。
- 石橋
- あれで89点なわけがない!
- 一同
- (笑)。
- 戸谷
- 出ちゃってたかぁ、すみません(笑)。あそこは自分に酔いしれている感じで、というディレクションをもらったところで、めちゃくちゃ面白かったです。
- 内山
- 僕は第12話で、花火を買って帰ってきて「なんかお前ら顔赤くね?」からの「まーいいや!」。ここに翔平が凝縮されていると思います。翔平マジか……という感じではあるんですけど、それほど花火やりたかったんだなって。ここは彼の名場面でしたね。
- 戸谷
- 誰よりも花火を楽しんでいたと思います!
- 石橋
- 僕、宇佐美のこと大好きなんですけど、なかでも第10話のボーリングのシーンで、凛太郎チームをめっちゃ煽ってるところは、本当に面白くて。収録中も戸谷さんめっちゃスゴかったんですよ。
- 戸谷
- え、何やってたっけ!?
- 中山
- あそこ良かった! 完全にアドリブだったところ。凛太郎が指抜けねえってあたりで、ずっと煽ってて(笑)。
- 石橋
- 友達のノリではあるけど、ここまでやるか!?みたいな、今までにない宇佐美が見られたのがすごく面白かったです(笑)。その後絢斗たちに負けて泣き顔になっているのも可愛らしいですし。
- 山根
- 常に遊びに本気なところが良いよね。
- 石橋
- そうなんですよ! ずっと少年だから。こういう友達が欲しいです。一緒にいたら絶対楽しいと思います。
- 山根
- 確かに! 友達に欲しいタイプかも。
- 中山
- 第10話の勉強会中、ご飯を食べてうとうとしてるところも可愛かったな(笑)。朔にずっとペチペチされていて。こんなデフォルメされたタッチ、今までの話数であったかな?と印象的です。
- 井上
- 赤ちゃんみたい。
――こうして聞いてみると、宇佐美の名場面はみなさんそれぞれここだ!というところが違う印象です。
- 山根
- 確かに!
- 石橋
- それくらいろんな魅力がありますよね。
- 戸谷
- 本当に良い子ですよ。
朔は知れば知るほど沼系男子。恥ずかしがらず素直な言葉を伝えてくれます
――続いて内山さん演じる夏沢朔の名シーンはいかがでしょう?
- 山根
- それはもう第12話です!「もう友達だと思ってるって言ってんの!」。最高でした。ドーナツもくれたんです~!
- 中山
- あそこ可愛かったな。
- 石橋
- ちゃんと人のことを見てる。
- 井上
- 朔くんがモテる理由が分かるよねっ!?
- 山根
- あそこで「ゆっくり食べてていいよ」じゃなくて、「食べたら早く来なよ」って言うのが、朔なんですよね。「まあいいんじゃない? 別に」とか突っ撥ねそうなイメージがある人じゃないですか? でも実際には「早く来なよ」「おいでよ」とちゃんと輪の中に入れようとしてくれるのが、すごく優しいですよね。
- 戸谷
- 確かに朔って、意外と突っ撥ねないし、意外とちゃんと喋ってくれるんですよね。あと海での「ちょっと!すごい濡れたんだけど!」の内山さんの言い方が、すごい良かったです。
- 中山
- 分かる。
- 内山
- あそこはディレクションで「めっちゃキレてください」って言われたんです。
- 戸谷
- 朔のああいう部分、めちゃくちゃ良いなって。アドリブでもけっこう感じることがあったんですよ。意外と乗ってくれる人なんだなと思いました。
- 山根
- 一歩引いて外から見てるというより、一緒に中に入って「何やってんの?」とツッコんでくれる人ですよね。
- 戸谷
- そうそう。めっちゃ人想いだし。
- 内山
- そうだね。
- 井上
- カラオケのシーンでも、凛太郎くんに何かあったことに気付いて、声を掛けてくれて。さっきも出たけど、ちゃんと人のことを見てるんですよね。凛太郎くんもそれに「わりーな」と返していて。
- 戸谷
- 察したうえで何も聞かないっていう。
- 中山
- 何か起こったとき、最初に気付くのは、大体朔な気がします。
- 内山
- 朔は毒舌っぽいことも言うし、最初はクールでドライな印象ですけど、何だかんだ勉強を教えてあげたり、優しいところがあるのが分かっていきます。今出たように凛太郎のことも気に掛けて、それとなく聞いてみたり、凛太郎が本音を100%伝えてくれていないんじゃないかと不安やもどかしさを抱えているところには、友達想いな面も見えると思います。
- 戸谷
- スポ大の「……俺は翔平と絢斗と凛太郎を 心の底から、信頼してる」も、……くう~っ! 良すぎ。
- 山根
- あそこもカッコよかった! ああいうことは言わなそうな人かと思いきや、素直な言葉をしっかり言ってくれるじゃないですか。ヤンキーが猫を拾ったばりのギャップを見せてくれますよね。
- 中山
- しかもそういう場面では、恥ずかしがらないんですよね。
- 内山
- 確かに。
- 戸谷
- 第12話での昴への発言も、恥ずかしがらずに伝えてくれていました。
- 中山
- ギャップという意味では、不良に絡まれたときの「邪魔。どいて」。
- 石橋
- そこー!!
- 井上・山根
- めっっっ……ちゃカッコよかったー!
- 戸谷
- (拍手)。
- 内山
- (笑)。
- 井上
- その後の煽りも良かったです!
- 戸谷
- 「オニーサン」ね?
- 山根
- 「いい加減気付きましょうよ。自分たちがダサいことに。ね? オニーサン」。(腕を上げて)うえ~い。
- 中山・戸谷・石橋
- うえ~い。
- 中山
- 収録中カッコよすぎて、思わず内山さんの後ろで戸谷くんと顔を見合わせちゃってね?
- 戸谷
- そうそう! 心の中で「内山さん、ヤバい~……っ!!」って(笑)。
- 山根
- 沼系です。
- 戸谷
- 沼系ですよ。
- 井上
- 沼系男子ですね。
- 石橋
- 普段クール系だからこそ、朔の表情が変わるところや感情が顕になるところがすごく好きです。依田と一緒に凛太郎と宇佐美を見守って、「翔平、何言ってんだよ……!」と焦ったりとか。
- 中山
- 表情と言えば、凛太郎の後をつけて、ファミレスで盗み聞きしているところの朔も可愛かったな。
- 石橋
- 確かにあそこも!
- 内山
- ふたりがうるさくするから(笑)。
- 山根
- 話が進むほど、笑顔やいろんな顔を見せてくれる人です。
- 石橋
- 心を開いてくれているんだなというのが、6人の関係性からも分かって素敵ですよね。
――内山さんが朔を演じるなかで、特に印象深いのは?
- 内山
- 細かいところなんですけど、凛太郎の家にお邪魔するとき、手土産を持っていくところです。流れは分かりませんが、高校生で手土産はなかなか持っていかないと思うんです。しかも「和菓子で良かった」と。
- 石橋
- ちゃんとしていますよね。スゴい。
- 内山
- ああいうときの手土産の提案とかは、やっぱり朔が言い出しそう。
- 山根
- 「何か持ってったほうが良いんじゃない?」って。
- 内山
- そう。真相は分からないけど、面白い一幕でした。
- 井上
- それに朔くん、意外と面倒見が良いですよね!
- 山根
- イケメンだし。
- 石橋
- ボーリングも上手いし。男性陣みんな「なんでイケメンでボーリングまでできるんだよ……!」って。
- 戸谷
- 羨ましがってたよね。
- 中山
- ボーリング後のグループラインを見たら、翔平は絢斗に「依田様」と情状酌量の余地を請うて、なんとか奢りを回避しようとしていたけど、朔は全然反応していなかったから。要領が良さそうだし、もしかしたらうまいこと回避しているのかも?(笑)
- 戸谷
- それか朔も悔しがっている可能性も!
- 内山
- とりあえず朔の欠点は、教え方とゲームが下手なことですね。
- 井上
- 凛太郎くんのお家でゲームをしたときとかに出る、子供っぽいところも好きです!「誰!?今ぶつけたの!」とか(笑)。 知れば知るほど可愛いです。
- 山根
- できないことがあるとムキになるところ、良いよね。勉強を教えるのが下手と言われて「今からこの問題解説するから、二人ともよく聞いてて!!」「どう!?」って言うのも、すごく可愛かったです。
- 石橋
- あそこ大好きなんだよなー。
- 中山
- うん、朔はやっぱりズルい!
- 内山
- 話が進むほど、ただ冷静なだけじゃない、可愛らしい表情が出てくるようになるので、そこも表現してあげたいなと思っていました。
誰とでも平和に過ごせる絢斗が、笑って怒りを露わにした喧嘩シーン
――石橋さん演じる依田絢斗の名シーンはどこが浮かびますか?
- 戸谷
- 凛太郎の机から薫子のノートが出てきたときに、「言いたくない」という発言を受けてのセリフが好きです。「……あの凛太郎が、何でもないって濁さないで、初めて僕たちに自分の感情を伝えたんだよ 僕、嬉しかったなぁ。」って。これが絢斗だなと感じました。そうやって朔のことも励ましてくれて。
- 山根
- そういう細かなニュアンスを拾える人なんですよね。「凛太郎は?」「凛太郎は何したい?」といった質問を凛太郎くんに投げかけるのは、絢斗くんが多い気がします。周りのことを観察して察することができる人ですよね。
- 井上
- 相手のことを理解して、その人に合わせて行動している人だよね。「朔くんって、教え方下手だよね」と指摘したあとは、「朔くんが傷付いちゃう!」とフォローしていたけど、これが宇佐美くん相手だったらきっとまた違ったじゃないですか?
- 山根
- 分かる! ちゃんと相手によって接し方を変えられるし、ものすごく空気も読むから。その場における自分の立ち位置と最適解を出せるというか、そうできるよう考えている子という印象があります。それに千鳥と桔梗の間でバチバチしているなか、誰ともギスっていなかったですよね。作中で唯一だったかも?
- 中山
- 依田がギスった相手は、不良ぐらいでしたよね。宇佐美や朔が桔梗は嫌いだみたいに言っているときも、依田は「さっき睨まれたよ~」くらいだし。
- 内山
- 優しいな。
- 石橋
- そもそも桔梗をあまり否定していないんですよね。凛太郎が薫子との関係をみんなに打ち明けたら何て言われるかな……と想像するところで、絢斗も「桔梗かあ……」と言っているんですけど、あれは実際の発言ではないので。「凛太郎から聞きました、あなたたちのこと。仲良くさせてもらってる、いい人たちだって」という言葉が出てくるのを見ると、本当に絢斗って良い子なんだろうなと感じました。普通だったら心の奥底で「でも桔梗だし……」と思ってしまいそうなものなのに、偏見がなく、「凛太郎が言うなら間違いない」という友達への信頼も見えました。
- 中山
- あとは凛太郎と朔がギクシャクしてしまったときには、「今回は宇佐美の出番だよ。二人が仲直りできたのは凛太郎のお陰でしょ?ね?」と絢斗が振ったことで、宇佐美の「スポーツ大会まであと3日!!」「練習がてら、放課後バッセンとかいかがでございますか!?」に繋がったり。
- 戸谷
- 確かにあそこ、めっちゃ良かった! 絢斗が背中を押してくれました。
- 中山
- あと第10話で、付き合うってどういうことだと思う?と聞く凛太郎に、「よく分かんない!」「その悩みにどんな答えを出したとしても僕は応援するよ」。
- 石橋
- そこそこそこ! そこなんですよ、やっぱり。
- 内山
- そこなんですか?
- 戸谷
- 僕もそこかな?って!
- 井上・山根
- (笑)。
- 石橋
- それこそボーリング場のドリンクバーで凛太郎と話すところは、めちゃくちゃ台本を読み込みましたし、どう言ったらいいんだろう?と悩みましたし、特に時間をかけて録ったところでした。絢斗はすごく良いことを言う子ですが、「だからといって名台詞のようには言わないで」とあって。そこは戸谷さんの宇佐美とも近いディレクションだったと思います。心の底から出た言葉として、もっと自然に言ってほしいといただいて、なるほどな!と納得でしたし、彼の真の想いが理解できました。一見のほほんとしていて、何も考えていなさそうな絢斗ですが、ちゃんといろんなところを見て、なおかつ大事な場面では自分の想いを伝えることができる子なんです。それができること自体まずスゴイし、そのうえで凛太郎の意思を尊重するよ!と言えるのもスゴいと思います。
- 中山
- そこからの、宇佐美にちょっと仕返ししようよっていう、時折見える少し負けず嫌いなところ。
- 井上
- ニコニコしながら宇佐美くんとかにツッコむのも可愛いですけど、そういう人間味があるところも素敵です。
- 戸谷
- 「大丈夫?」と聞くときも、ちょっと飄々としている感じがあったり。
- 石橋
- 確かに絢斗は全体的に、そういうディレクションが多かったです。
- 戸谷
- そうだよね? 日めくりボイスとかも。
- 中山
- 日めくりボイスと言えば、しょっちゅう人の変顔を撮っているイメージもある(笑)。宇佐美の変顔とか、寝顔が面白いからみんなに見せようみたいな。
- 井上
- あとはやっぱり、喧嘩が強いところ!
- 山根
- 誰が言い出すことになったとしても、そこは絶対外せないよねと思ってました!「凛太郎は最高にかっこいい男だよ」。ちょっと本気出しちゃうか~みたいな様子なのも、何でこの人、こんなに喧嘩強いの!?と気になります。
- 石橋
- 163cmと、男性陣では一番小柄なんですけどね。演じるうえではめちゃくちゃ難しかったです……。まず僕が原作と台本を読み込んで練習して用意していったお芝居と、現場で受けたディレクションの方向性が、全然違ったんですよ。具体的には「もっと笑ってほしい」といただきました。怒ってはいるけど、復讐できて嬉しい方向でと聞いて、そうだったんだ!と僕としても気付きがあって。ボーリングで宇佐美に仕返ししようよと提案するところも、原作ではニヤッとしていたので、声のトーンは落ちるんじゃないかと思っていたんです。ただそこもやっぱり笑ってほしいと。一体絢斗はどれだけ腹黒なんだ……!?とは思いました(笑)。
- 一同
- (笑)。
- 石橋
- もちろんそういう面だけじゃなく、凛太郎のことを想う人の良さも含めて、依田の魅力が詰まったシーンで、そのぶん収録もすごく大変だったので、印象に残っています。
- 戸谷
- ただ怒っているだけじゃないニュアンスを出せていて、陽彩くんスゴいな!と思いながら聞いていました。
- 中山
- 依田は今回のアニメではまだ描かれていない部分があって、彼も彼で実は壁を1枚作ってるんですよね。だから桔梗なんかに対しても、あまり明確な言葉を使わないというか、ちょっと濁す感じがあるじゃないですか?
- 戸谷
- 壁があるんだよなー。絢斗壁あるよ。
- 石橋
- そうなんです。壁があるんですよね……(笑)。だから第1話で宇佐美が「やっぱ凛太郎ってさ、どっか壁あるよなー……」と言ったとき、絢斗はどういう気持ちで聞いてたの?と思いました。ただ彼は彼なりに楽しそうにしているから、大丈夫じゃないかな?とは思うんですけど。
- 戸谷
- うまくやれちゃうからね、絢斗は……。
- 山根
- まだ明かされていないことが多い子なんです!
- 一同
- うんうん。
- 石橋
- 本当にそうなんです!
- 井上
- やっぱりこの先のお話も、ぜひまたアニメでも観たいです!
昴を演じる3つの心得――「泣きに行かない」「怯えない」「解決しようとしない」
――それでは6人目となる最後は、山根さん演じる昴のお話を聞かせてください。
- 山根
- (さあどうぞとみんなを煽る仕草)。
- 一同
- (笑)。
- 井上
- 昴は薫子ちゃんの誕生日に気を利かせてくれて!
- 一同
- あー!
- 中山
- 電話越しの!
- 内山
- 日付ズラしね。
- 山根
- 昴のナイスプレイでしたね。恐らく何も予定はないのに「私の都合で申し訳ないんだけど、22日は予定が入ってて…」と根回しして、凛太郎くんには誕生日を教えて。
- 石橋
- ナイスプレイでした!
- 戸谷
- まじナイス!
- 井上
- ああ言えるのもスゴいよね!? 自分だって薫子ちゃんのことが好きなのにさ! 薫子ちゃんの気持ちを優先してくれて。
- 山根
- 当日私だって会いたいよ!って、きっと思っているだろうに。薫子が一番会いたいのは凛太郎くんだろうなって、分かっているんですよね。それに凛太郎くんだったら、薫子を笑顔にできるってことも分かっているし、そう信じている。そう思わせてくれる凛太郎くんもスゴイんです。
- 戸谷
- ね! 信頼関係ができていますよね。
- 中山
- 「好きな人の話をするあなたを、もっと見たいなって思ったから」って。
- 井上
- 昴と掛け合っていて、優しさで胸がぎゅうっとなりました。「もう! もう!」とか言っているけど、薫子ちゃんとしては嬉しいじゃないですか。
- 山根
- オーディションでも演じたこの電話のシーンは、私としても印象深いです。恐らく全話を振り返っても、昴史上一番優しいトーンが出せたかもしれません。
- 内山
- 薫子想いな人だと思います。
- 戸谷
- それから「あの問題集……中学で使っていたものだわ……!」も好き。
- 一同
- (笑)。
- 戸谷
- 昴本人は至って真面目だけど、ちょっと場にツッコむ感じが珍しいし、こんな一面も見せてくれるんだと印象的です。モノローグなんですけど、「お、良いね昴! みんなと仲良くなってんじゃん!」と思いました。
- 石橋
- 僕は原作から大好きなのが、「私も……まだやりたいわ。花火」。
- 山根
- (静かに挙手)。
- 石橋
- あ、昴みたいに手を挙げてる!(笑)ようこそこちら側へ……!!という気持ちになりました。みんなとの関係性もだいぶ深まってきたなかで、「私はまだやりたい」と、昴自ら手を挙げたよ!まだみんなと一緒にいたいんだよ!この時間が楽しいって思ってくれてるんだ……!!と僕まで嬉しくなりました。
- 山根
- 多分みんなと一緒にいる場で、何かをやりたいと発言したのは、初めてなんですよね。それまでは合わせるばっかりで。
- 井上
- その前までは「私何でもいいわ」って感じだったもんね?
- 戸谷
- サンドイッチを選ぶときもそうだった。
- 石橋
- そんな昴が自分の意見を言ったっていう。
- 中山
- こうやって見ると、やっぱり昴って、ちょっと凛太郎と似ています。
- 戸谷
- 確かに!
- 山根
- 前にほーちゃんとの対談でも、まさにその話をしたんだよね。
- 中山
- 宇佐美が昴たちと公園で顔を合わせたときに、「ディスられるのなんていつものことだしさ~」と言われて、宇佐美としては「別に気にすんなよ!」という意味で言っているんだけど、昴はちょっと食らってるんですよね。見かけだけで判断したり発言したりしてしまったことを、「ごめんなさい」と謝るところも含めて、凛太郎と似ているなと感じます。
- 山根
- 昴も昔から銀髪という外見で判断されたりイジられたり、それにいっぱい傷付いてきていて、そういう境遇も少し似ていますよね。
- 内山
- ルックスのことで男子に苦手意識ができたことは、昴にとってはつらい思い出でしょうし。
昴の名シーンはほかにもいろいろ浮かびますが、第12話まで来ると、かえって初対面した第3話あたりの、冷たい頃の昴が懐かしいです。最初は本当にあたりがキツくて。
- 一同
- あはははは!
- 山根
- 「……バカが増えた」とか言ってましたしね?
- 内山
- 「薫子に関わらないでくれるかしら?」「時間を割く必要ないわ」とか、“昴語録”が飛び出していました。
- 中山
- 薫子が弁明しようとすると、「大丈夫よ」と急に優しくなるし。
- 内山
- 朔もそんな昴にキツく当たっていただけに、今は初期昴が懐かしく感じます。だんだん柔らかくなっていきましたね。
- 山根
- 柔らかいところと言えば、薫子との第6話の最後、凛太郎に「内緒」と言って、サブタイトルが出る流れになっていて。
- 井上
- あのセリフ本当に良かったよ!!キュンとした。
- 山根
- これ修正が入って。
- 石橋
- サブタイトルに被ってるんだ、うわー……!
- 戸谷
- その修正、僕のところに来てないんだけど!?
- 内山
- ……出ていなかったのでは?
- 一同
- あはははは!
- 戸谷
- そっか、出てなかったです(笑)。
- 山根
- それから昴は音響監督さんからよく言われていたディレクションが3つあって。「泣きに行かないで」「怯えないで」「解決しようとしないで」です。
――「解決しようとしないで」ですか?
- 山根
- はい。前回の座談会でもお話ししたのですが、よく「すぐ解決しようとするー」と言われていました。昴が内に入るターンが終わるときに、いつもちょっと前を向くのですが、そこで解決したような雰囲気になっているよと。昴にとっては少し視界が開けただけで、まだ何も解決していないし、何かが大きく変わったわけでもないんですよね。それから何かを伝えようとするシーンで、私がどうしても泣きの芝居に行ってしまいがちで。でもそれだと泣き落としに聞こえてしまうので、そうじゃなく、昴はちゃんと腹を決めて、覚悟持って一個一個話しているんだよというのもご指摘いただいていたことです。例えば第4話で、凛太郎くんとカフェで喋っているシーンもそうでした。
- 中山
- 確かにテストでは泣きに来られて、僕刺されました……(笑)。泣かれてまで、友達ともう会わないでくださいと言われることなんかないから、うぅっ……!って。
- 山根
- そうなんですよね。泣かれてしまうと、誰も何もできなくなっちゃうじゃないですか?その時点で物語がストップしてしまう。そうじゃなくて昴も昴なりに、凛太郎くんにどう思われようと、たとえ薫子に嫌われようと、それでも覚悟を持って、対等に話をしようとしているんです。
内山さんが笑ってくれると、みんな嬉しいんです!
――収録現場でのエピソードも聞かせてください。
- 山根
- 内山さんって、もっと静かで喋らない方だと思っていたんです。
- 一同
- (笑)。
- 山根
- 私が第3話で初めて現場入りしたときは、待機時間になるとブース外の椅子に座っていて、そこが“内山さんの席”みたいになっていたんですよ。
- 中山
- ええ!? どの椅子か覚えておかないと(笑)。
- 内山
- ないよ、そんなの(笑)。
- 山根
- それで第8話の収録日、Bパートの本番で自分は一旦外に出たんですね。そうしたら内山さんも、外にいらっしゃって。そこで「話し掛けていいですか?」と、会話が始まったんです。
- 一同
- へー!(笑)
- 山根
- 内山さんは手にしていたスマホをちゃんと置いて、「良いよ」と言ってくださって、そこから30分ぐらい。そのとき、こんなにフランクに喋ってくださる方なんだ!と、知ることができました。それまでは話しかけちゃいけないのかな?とか、勝手に思ってしまっていたんです。
- 井上
- それで言うと私、めっちゃ可愛い話があります! 収録の合間に「薫子ちゃんと昴、どっちがタイプ?」みたいな話題になったことがあったんですけど、綺ちゃんが「内山さんは絶対昴って言ってください。昴ですよね!?」って、内山さんに。
- 一同
- あはははは!
- 内山
- 言ってた(笑)。
- 井上
- その必死な綺ちゃんがすごい可愛くて、内山さんも笑っていらっしゃいました。
- 山根
- ああいう言い方ができたのも、まさにその第8話のときにお話ができていたからこそでした。
- 井上
- 多分みんな共通で、内山さんが笑ってくれていたら嬉しいし。
- 中山・戸谷・石橋・山根
- そうそうそう!
- 中山
- 「内山さん、前より笑ってくれたね?」とか。
- 山根
- 「今日はいっぱい笑ってた!」って、毎回盛り上がっていました。しかも実際内山さんも、第8話以降、外にいる時間が減りましたよ?最近はめっちゃ中に残ってくださるんです。それで第12話の収録時、私たちも花火したいね!って話になって。
- 石橋
- 来た、来ました!この話、最高!
- 戸谷
- めっちゃ面白い!
- 山根
- 内山さん、その話、してもいいですか?
- 内山
- 全然いいよ(笑)。
- 山根
- 「実際海で花火できるのかな?」「みんなでドライブして、花火しましょうよ!」となって、みんなで「内山さん、やりましょうよ!」って言ったんです。そうしたら内山さんが、「え……。やるの?俺が?花火を?内山昂輝が??」って。
- 一同
- (拍手して爆笑)。
- 石橋
- 名言すぎる!
- 戸谷
- 超面白かった!
- 山根
- 最高でしたよ!これを引き出せたから、もうわたしたちに悔いはないです。いやあ、良かった。でも絶対実現させましょう!
- 中山・井上・戸谷・石橋
- しましょう!
- 山根
- 内山さん、やるんですよ?手持ち花火を、内山昂輝が!
- 内山
- (笑)。
――収録を通して仲が深まっているのが伝わってきました。内山さんとしてはどんな現場でしたか?
- 内山
- みなさん年下なので、最初は一歩引いて見守る気持ちでいました。でも、みんなでアドリブの作戦会議をしたり、毎回時間を掛けてアフレコをしていくなかで、だんだんと協力体制ができあがっていって、良い雰囲気で1クール終えられたんじゃないかなと思います。とても良いアフレコ現場でした。
- 戸谷
- 内山さん、僕らそれを聞けて、みんなニコニコです!
- 井上
- 最初のほうは現場が静かすぎて、スタッフさんたちに心配されていたのに。
- 中山
- そのときは日笠さんや、塚っちゃんこと担任の塚田先生役・小林親弘さんが、率先して喋ってくれていましたもんね。
- 石橋
- それも本当にありがたかったです。
- 山根
- 最初は千鳥と桔梗みたいに、それぞれ壁があって、あまり積極的に喋れていなかったんですよね。でもスタッフさんが差し入れしてくださったおにぎりをきっかけに、雑談するようになっていって。けっこうご飯が繋いでくれた感じがします。
- 一同
- (スタッフのほうを向いて)ありがとうございます!
- 戸谷
- それで言ったらケーキも!キャラクター含め、収録期間中に誕生日を迎える人が多くて、何回か食べましたよね。
- 山根
- みんなの誕生日と、翔平の誕生日と。戸谷くんだけ11月だから、もう少し先なんですけど。みんなでわいわいケーキを切って、『ハッピーバースデー』も歌って、楽しかったです。
- 井上
- 食べながらいろんなお話もして。
- 山根
- 一度収録後に、1時間半とか話していたこともありましたよね? 濱野さんも交えて。
- 戸谷
- 車でバックはどうやるかって話を、延々としていたことがありました(笑)。
- 石橋
- あれも楽しかったな。
- 井上
- みんなと仲良くなれたことで、収録が終わってしまったのが寂しいです。
- 戸谷
- でも残る最終話のオンエアが、めっちゃ楽しみ!
- 山根
- それに私、第14話からまた始まると信じているので!何年先になろうと、アニメ『薫る花』と再会できる日を、ずっと待っています!
――それでは最終話に向けて、一言ずつメッセージをお願いします。
- 中山
- 第1話から始まった物語も、とうとう第12話で凛太郎が薫子への気持ちに向き合い、最終話となる第13話でその答えを出すことになりますので、まずはそこに注目していただきたいです。また、ずっと語られていなかった“薫子がなぜ凛太郎を知っていたのか?”ということも、明かされるはずですので楽しみにしていてください。
- 井上
- 今までの物語は凛太郎くん主体で、モノローグも凛太郎くん視点が多かったですが、最終話は……?というのを、楽しんでいただけたら嬉しいです。またふたりの時間がしっかり描かれる最終話になっていますので、そこでのドキドキ感や、全13話掛けてふたりの心の距離がどれだけ近付いたのか?という繊細な部分も、感じ取っていただけたらなと思います。
- 戸谷
- 凛太郎は最初こそ、僕らとも壁があった状態から、薫子が現れて、千鳥の3人ともいろんなことを経て、その壁がどんどん取っ払われていきました。ついには「好きです」とまで言うようになった凛太郎が、最終話ではどうなってしまうのか!? ぜひ楽しみにしていてほしいなと思います。僕自身どんなアニメーションになるのか、すごく楽しみなので、みなさんにも最後まで一緒に見届けていただきたいです!
- 内山
- 第12話の収録中、原作と台本を読み比べながら「最終回はどこで終わるかな?」と、横にいた戸谷くんと予想していたんです。それが当たっているかどうかを、楽しみにしています。
- 一同
- (笑)。
- 内山
- 第12話が僕たちの最終回でしたから。
- 戸谷
- そうですね、僕たちの最終回!(笑)
- 内山
- 最後のシーンの予想は立てています。みなさんもそれを確かめるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
- 石橋
- 今までの積み重ねを経て、ふたりの関係がどう変わっていくのか、楽しんでいただきたいです。最終話に出てくる僕の大好きなシーンが、どんな演出や音楽がつくのか、今からオンエアで観るのが楽しみで仕方ありません!この胸の高鳴りをみなさんと共有したくてたまりません!!みなさんどうぞ目をかっぴらいてご視聴ください。
- 山根
- 6人はもちろん、凛太郎くんのお父さんお母さんを見ても、『薫る花は凛と咲く』は言葉と自分の気持ちをまっすぐ相手に伝えることを、とても大切に描いているなと感じていますし、私もたくさん学ばされています。これまでの12話、そして最後となる第13話もご覧いただけたら、周りの人にきっともう少し優しくなれるような、温かい気持ちになれるはずです。ぜひ何度も観返してみていただけたら幸いです。