SPECIAL

スペシャル

中山祥徳×井上ほの花×戸谷菊之介×内山昂輝×石橋陽彩×山根 綺
座談会インタビュー(前編)

過去最長収録時間となった第12話は、恋愛も友情も名場面尽くし!

――最終話目前となる今回のインタビューでは、メインキャストのみなさんにこれまでの物語を振り返りながら、それぞれの名場面をたっぷり語り合っていただければと思います。まずは放送されたばかりの第12話はいかがでしたか?
中山
第12話は後半の「好きです」に持っていくまでが、全話を通して特に難しかったです。
戸谷
モノローグめちゃくちゃ良かったですよ。かなり力を入れて収録してましたもんね。
山根
確かに第12話は、今までで一番時間を掛けた回になりました。
石橋
過去最長でしたよね?
中山
16時から録り始めて、22時まで掛かりました(笑)。
井上
私も細かくディレクションをいただきました。
山根
私も! Aパートは昴がお当番だったので、セリフが多い人ほどお時間をもらっていたと思います。
内山
熱い回ではあったよね。
山根
「好きです」はテストから最高でしたよ。
井上
ふいに出ちゃう感じが良いよね!
山根
そう! 言おうと思って言ったわけじゃなくて、つい言っちゃった……という温度感が絶妙でした。
中山
「好きです」も難しかったんですけど、その前に薫子から線香花火を受け取って、「今日楽しかったね」と言われるところで、ぼんやり別のことを考えながら返す「そうだね」が難しくて。音響監督の濱野高年さんから「音が出なくても良いから、少し声が掠れる感じで」といただいてトライしました。このあたりはお芝居としてちゃんと気持ちを繋げていけるように、モノローグ部分は別録りしています。
井上
私はあのふいに出た「好きです」を受けて、薫子ちゃんと一緒に「………」状態でした。そもそも「好きです」って、生きてきたなかでも聞く機会がそんな多い言葉ではないじゃないですか。だから薫子ちゃんと一緒に「わあ~っ!?!?!?」ってなっていたんですけど。
一同
(笑)。
井上
ただその後、Bパート終わりとCパートの薫子ちゃんのセリフが、けっこう似ていて。そこのお芝居が同じになりすぎないようにしなきゃ……!ということも、意識していました。
山根
「好きです」以降、周りの会話が一切入ってないんだろうね?
戸谷
薫子も引きずってたんですね……。くう~!
山根
戸谷くん、薫子の話になるといつもこうで(笑)。ほんと薫子のこと好きだよね?
一同
(笑)。
戸谷
薫子は素直に生きているところが、すごく良いですよね! 第12話の収録、楽しかったな。翔平は「と・う・ちゃーく!!」から始まって、ずっと騒いでいた気がする。
内山
第12話はアドリブを考えるのに苦労しました。
戸谷
そうそうそう! 海で遊ぶシーンが何度か出てくるから。
中山
アドリブといえば、第12話にしてやっと凛太郎が、千鳥組のアドリブに加われた気がします。それまではアドリブは基本的に3人だったので、遂に念願が叶いました(笑)。
戸谷
凛太郎は大体裏でモノローグを言ってましたもんね。
石橋
あとは昴、朔、絢斗の「……ん?」には、めっちゃリテイクが出ましたよね。
内山
花火を買って帰ってきたら、ふたりに何かあったなと察するところだね。。
山根
短いセリフなんですけど、何度も録り直しましたね。3人がどこまで察しているのか、いろんなパターンを試しました。
内山
対して翔平は気付かない。「顔赤くね」までは辿り着いているんだけど。
井上
救われてる、救われてる! その鈍感さにこちらとしては(笑)。
内山
「花火のせいで暑かったのか?」になるってこと?(笑)。
戸谷
「まーいいや!」ってずっと気付かない。
内山
「まーいいや!」でいいのかよ!っていう。
戸谷
翔平は早く花火がやりたいから(笑)。
石橋
少年だ。
山根
可愛い。
中山
その前の第10~11話あたりは、勘が良かったですけどね? 「和栗さんと付き合ってんの?」「でも好きなんだろ?」とか。
内山
この時は花火に集中してるのかも。
戸谷
もしかしたら本当に忘れているのかもしれないけど。
一同
(笑)。
内山
翔平って今後恋とかするのかな? この先の展開に期待だね。
石橋
彼女欲しいとは、ずっと言ってますけどね?
戸谷
そうなんだよね。
中山
それから第12話は、昴の「……美味しい……」も良かったです。
石橋
第12話の昴、最高ですよ! これが昴だ!って回でした。
戸谷
うん、良かった! Aパート終わりはまじで泣きそうになりました。
山根
本当!?嬉しい……。
井上
私も。Aパートは昴の想いを強く感じることができて、「昴、頑張れ……!」という気持ちでした。
山根
ほーちゃん(井上)は感受性が強いから、実はテスト後に泣いてくれたんですよ!みんなに想いを伝える場面は、勇気を振り絞りましたね。男の人に「男の人が苦手」って言うんですもん……。でもあなたたちのことは苦手じゃないし、自分の価値観も変わって、「あなたたちと、今、友達になりたい」と伝えることで、彼女自身も変わりたかったのかもしれないなと感じました。それで無事受け入れてもらえたというか、みんなとしてはとっくに受け入れてくれていたんですけど、とにかくわざわざ友達になりたいなんて言わなくていいんだよと言ってもらえたのは、嬉しかったと思います。抱えていたモヤモヤは何でもないことだったんだと、海に浸りながら心から思えただろうし、昴にとって居心地良い場所を作れた瞬間でした。
中山
薫子に背中を押されて、ポロッと零す「あっ……」も良かったし。あそこは映像上の演出も素晴らしかったじゃないですか?
山根
スゴかった! まさかのカメラを海側から映すという、原作とは違ったアプローチで。「なんでもないわ。……なんでもないの。」って。Aパート後のアイキャッチに「ああ、 楽しいな」という昴のセリフが入るのもあって、一回クライマックス感があるんです。でも「ここでこの回が終わっちゃいそうな雰囲気になっているから、終わらないで。すぐ解決しようとする~」と言われました(笑)。「昴のなかではちょっと前に進めた、階段を1歩上がれた程度だから、まだそこまで解決しないで」と。ほかには海辺で水を掛けるシーンの朔くんが、テストでめっ……ちゃ優しかったんですよ! 最高でした。
内山
ディレクションでは「先読みした感じは出さないでほしい」といただいたんです。だからここでは今この瞬間を生きて、ということで。
山根
ドーナツのところも、ちょうどいい温度感で、すごく嬉しくなりました。「お腹空いたの?」「食べたら早く来なよ」と、こちらに委ねながらも寄り添ってくれる感じがして。
井上
昴もドーナツが好きという話をちゃんと聞いているからこそ、できる行動だったしね? だって私たちはサンドイッチを見ていたから、それでも良いわけだもん。

凛太郎のセリフを考えると、薫子の顔が浮かびます

――それでは6人それぞれについて、まずは中山さん演じる紬凛太郎の特に印象に残っているシーンやセリフを聞かせてください。
山根
「鮮烈に跳ね上がるこの感情から、目を逸らすことなんて、もうできない」!
一同
ああー!
中山
第8話の水族館ですね。
山根
ここで第8話が終わるんですよね。個人的にNo.1に挙げたい名場面で、とても素敵でした!原作を読んでいるときから、アニメではどう来るのかな?と楽しみにしていたので。やっと明確に自分の気持ちに気付いたか!と、強く印象に残っています。
中山
原作から美しいシーンでしたもんね。あのとき凛太郎としては、美佳ちゃんから言われたことで頭がいっぱいで(笑)。井上さん演じる薫子のセリフを聞きながら、どこか意識を飛ばしているような心地でした。まさに凛太郎の内面のように、自分の心臓もドクンドクンと鳴っていましたね。
井上
薫子ちゃんのいろんな表情が見られた回でしたもんね。凛太郎くんの心がすごく動いていて、私も大好きです。
中山
美佳ちゃん、ナイスプレーすぎました(笑)。
井上
本当に! 美佳ちゃんに感謝です。ほかにも凛太郎くんの好きなところはいっぱいあるんですけど、印象的だったという意味では、第1話冒頭で翔平くんたちが不良に絡まれているところに、「コイツら、なんかしたんすか。」と、ズンと登場するシーンです。本人としては普通に発言しているつもりなのに、絵が付くと確かに夜に凛太郎くんが出てきたら少し怖いかも……?と気付かされたというか。ほかの人からは凛太郎くんがこうやって見えていたんだな、ということが分かった1シーンでした。
内山
それ以外だと、凛太郎はスポ大で見事ホームランを打ってくれたね。
一同
あー!(拍手)
戸谷
朔とのわだかまりを解消した後の、シンプルな活躍だ!
井上
「今日はいい天気だな」って。
山根
いい空でしたねえ。
内山
青春を感じました。
中山
めっちゃ青春ですよね。凛太郎だけじゃなく、千鳥組4人全員が良かったです
山根
無事ホームランが打てて「みんなの役に立てた!」という気持ちよりも、「いい天気だな」が先に出てくるところが、とても綺麗な心の持ち主なんだなと感じましたし、彼自身の晴れた心模様ともリンクしているように見えました。
中山
前日のことが気になりすぎて、それまで上を向けていなかったんですよね。
戸谷
僕は昴が初登場した第3話で、朔の発言を止めるところ。「普段のお前は、そんなだせーこと言うやつじゃねえだろ」が、凛太郎らしいなと思いました。
中山
実はそこ、お芝居としてはめちゃくちゃ難しかったところでした。カッコつけた発言ではないから、さらっと言わなきゃいけないんですけど、その“さらっと”って難しいな……って。しかも朔とは物理的な距離が少しあるじゃないですか? でも遠くから声を掛けている感じでもなかったから。
石橋
僕は個人的にポンコツ凛太郎がたびたび顔を出すのが、良いなって(笑)。薫子のことを考えると、壁にぶつかっちゃったり、スポーツが下手になっちゃったり、何もできなくなってしまうのが可愛らしいなと見ていました。それから第2話の「学校ばっか気にして、和栗さんを見てなくてごめん!」。『薫る花』はあそこから始まる物語だと思うので、めちゃめちゃ好きです。
山根
昴的には「もう、薫子に会わないでください。 ……お願いします……」に返された「ごめん。できない」も。従来の作品なら、好きとは自覚していない段階で、相手側の身近な人にここまで言われてしまったら、「確かに彼女の邪魔をしちゃうな……」と、一旦身を引く「ごめん」になる気がするんです。でも凛太郎は「ごめん。できない」だから。どんだけ好きやねーん!
戸谷
好きじゃん!
石橋
それは好き!
井上・内山
(笑)。
中山
(笑)。でも本人は自覚していないっていう。
戸谷
ただこれからも薫子に会いたいっていう、純粋な気持ちでね?
山根
本当にピュアな人たちですよね。
井上
勉強も、好意があったら「教えて~?」になりそうなものなのに、「まずは自分でやってみたいんだ」っていうところが、凛太郎くんはカッコいいです。
戸谷
それから「敬語! 次からは付けなくていいから!」も大好き。
石橋
名シーン来ました。
中山
あれズルいよね~! お風呂上がりで、髪の毛を下ろしているのも、ちょっとズルいし。
山根
うん……良い。……めちゃめちゃイイ!!
一同
(笑)。
戸谷
あのへんキュンキュンしますよね。
中山
凛太郎はまっすぐすぎて、このセリフって挙げるのが難しいな……。自分は凛太郎のセリフを出すために、薫子のことをずっと見続けていたから、凛太郎以上に薫子のセリフや表情が浮かぶんですよね。
戸谷
それも素敵!
山根
たしかに、人間ってそういうものなのかもしれません! 自分が言ったことよりも、人から言われたことのほうが覚えていますもんね。
戸谷
凛太郎って声が低いし大人しめな人という印象があったんですけど、モノローグでは焦っていたり、言動やセリフ回しにはちゃんと高校生らしさがあるんですよね。そこを中山さんは第1話からとてもナチュラルに表現されていて、僕もすごく勉強させていただいていました。

薫子を取り巻くいろんな形の“好き”

――続いて井上さん演じる和栗薫子の名場面はいかがでしょう?
戸谷
薫子は全部だ、全部!
石橋
全部ですね。
山根
第1~2話が圧倒的優勝なのは、言うまでもないんですけど! ケーキ屋さんにも足を運び続けているように、言動がずっとまっすぐで、自分の気持ちをちゃんと相手に伝えられる姿に、この子は人生何周目!?と思わされます。本当に素敵な人です。あとは「私が好きな昴を、昴が否定しないでよ」「私はその日までずっと、昴に伝え続けるよ!私は昴が大好きだって!」が、本当に良くて。
井上
同じ! 「自分が見てきたものを信じたいの」から「私はその日までずっと、昴に伝え続けるよ!私は昴が大好きだって!」という一連のセリフが、私も大好きです。それに内に入ってしまう昴に、「なんかいや!」とハッキリ言えたりするところには、凛太郎くんと接しているときとはまた違う顔が見えますよね。
山根
それによく気付く子なんですよ。やっぱり小さいときから一緒にいるから、昴の表情がちょっと曇っているだけで「何か今考えているんだろうな」って。しかも第12話で「悩んでること、教えて?」と言ってくれたように、それをおざなりにしないでいてくれる。薫子のそういうところに、昴はずっと救われていたんだろうし、だからこそ彼女の力になりたいと思うのだと思います。
井上
少し昴の話をしちゃうけど、ここで「薫子を信じ続ける」って昴が言ってくれたのが、私はすごく好きでした。「何があっても、傍にいる。 そして、いつか“私”も、あなたが大好きだと言ってくれた“私”を、愛せるようになりたい。 胸を張って、あなたの隣を歩けるように」。やっぱり薫子からしたら、昴は自分のことを昔から想い続けてくれる人で。凛太郎くんにはもう会わないでくださいと言いはしたけど、最終的に「薫子はどう思っているの?」と薫子ちゃん自身に全部委ねてくれるのも、スゴいなと思います。好きだけど「私だけの薫子!」「どこにも行っちゃだめだよ」「~~はしないで?」となるのではなく、「薫子はどうしたいの?」と聞けるのは、昴の強さだな、これってまさに愛だよなって。なかなかできることじゃない。 好きだからこそ縛りたくなっちゃうものだと思うのに、薫子ちゃんにはそうしないところが好きです。
中山・山根
愛だ。
井上
愛ですね。それに強いですよね。
山根
小さい頃から一緒に過ごしてきたなかで、凛太郎くんみたいな人はきっと今まで現れたことがなかったわけで。よく分からない人に薫子を渡せない! 会わせられない! 守らなきゃ!と思っていたわけじゃないですか。でも薫子自身の幸せを願えるのは、ひとつの愛の形だなと思います。
井上
さらにそのやり取り後に、昴から「紬くんのこと、好き?」と聞かれて、「…うん。すき。だいすき」と答えるところも、すごく好きで。昴に対するものとはまた違う“大好き”なのが、良いなって。
山根
いろんな「好き」があるし、どっちのことも本当に大好きなんだよね。実はここ、家で台本を読んでいるときはどう演じようかと悩んでいたところだったんです。でも収録当日、ほーちゃんとマイク前で掛け合ってみたら、テスト時点からびっくりするくらいやりやすくて! 「ごめん、昴。 私、凛太郎くんに会いたい」「すき。 だいすき」が、本当に心の底から思っているんだと切実に伝わってきたから、それを受けて「…そう。」とちゃんと包み込む気持ちになれました。一緒に録らなければきっと出てこなかったお芝居だと思いますし、ここの薫子は本当にスゴかったです。泣けちゃいます。
戸谷
素晴らしい……っ!(拍手)
中山
僕は第5話の中間試験が終わったあと、ケーキ屋に来た薫子が凛太郎とするハイタッチがすごく好きです。
井上
ハイタッチ、私も好き!
中山
さらにハイタッチ後、元気のない凛太郎を「いっぱい食べるといいよっ」と励ますんですよね。それを聞いて凛太郎が笑うんですけど、そんな彼を眺める薫子の表情がものすごく素敵なんです。セリフはなくても、優しい笑みを浮かべていて、原作でも大好きなシーンでした。それもう好きを通り越してないか!?みたいな表情で、印象に残っています。
戸谷
薫子の言葉に、凛太郎の心のモヤも晴れるというか。うわー薫子……(と言って、噛み締めた表情をする戸谷さん)。
一同
(笑)。
石橋
早い!
中山
急に浸ってる(笑)。
井上
この「いっぱい食べるといいよっ」って励まし方も、人の変化に気付ける子なのが分かるところで、スゴいなって。いろんなところにアンテナを張っているから、常にそういう言葉が出てくるんだろうなと思った、好きなセリフでした。あと薫子ちゃんは、食べているシーンがどこも可愛すぎます!
戸谷
僕は迷子の美佳ちゃんと出会ったときに、「ほっとけないもん」と言うのが、薫子っぽいなって。
井上
イルカショーが観たいと言っていたのにね?
戸谷
そうそう。凛太郎も「そうだった 和栗さんはこういう人だった」って言っているし。
山根
あとは凛太郎くんがケーキを作って誕生日に渡す場面で、「凛太郎くんに見てほしいって思ったんだ、私の好きな場所」と公園に連れていくところも良かった。それはもう……好きやん!って、収録現場でもひと盛り上がりしましたね。
中山
もうそれ、告白ー!っていう(笑)。
戸谷
凛太郎が「俺が……作った」って聞いたときの表情もヤバいよね? 1回びっくりしてスッ……となって、ああ今いろんな感情が内心巡ってるんだろうなっていうのが伝わってきて。ただ嬉しいだけじゃなく、何か愛みたいなものを感じているのかもしれないし。
中山
舞い上がるというよりは、胸が締め付けられるみたいな方向だよね?
戸谷
そうそう!
石橋
それで言うと、その後の「……おいしい」も、僕大っ好きで!!どんなことを感じているの? 本当に良かったねえ……!と、ズキュンと来ました。
山根
「先にちょっと、食べちゃってもいいかな……?」からの「……おいしい」ね。あれ、良かったねえ……!
内山
僕は第3話の図書館で、薫子が実は特待生で桔梗に入っていたのが分かるところが印象的でした。それまではお嬢様のイメージがあったけど、一般家庭の出身で、「私のプライドです」と言っていたように、こんなに勉強を頑張っている子だったんだと。
戸谷
あのセリフもカッコよかったですよね。
山根
めちゃくちゃカッコよかった。
――井上さんは演じるなかで、特に悩んだところはありますか?
井上
お時間をいただいてしまったのは、ファミレスで勉強会をしているときに、宇佐美くんに「ノルマとか決めてそれ達成したら食べない?」と、ご褒美を提案するセリフです。宇佐美くんにはどこかお母さんというかお姉さんのように接するところで、ディレクションで言われていることは分かっているのに、どうしても音にして出すことができなくて、「また後で録りましょう」と寝かせることになったんです。そのとき綺ちゃんが「こういう感じじゃない?」と実際にやって、私を助けてくれて。
山根
そんなそんな……!! それまで宇佐美くんとふたりで掛け合うことがあまりなかったから、薫子にとって彼がどういう存在かって、難しいところだもんね。
戸谷
確かにこのふたりが1対1で話すようになったのは、後半になってからかも。でも最初から僕はお母さん感を感じたし、井上さんのお芝居めっちゃ良かったですよ。多分細かいニュアンスの差ですよね。
井上
ありがとうございます! あと私は第2話の「私は和栗薫子です そしてあなたは紬凛太郎くんです 千鳥と桔梗なんて関係ない 他でもないあなただから、私は知りたいと思ったんですよ」が大好きなセリフなんですけど。
戸谷
分かります。
石橋
名シーンですね。
井上
この言葉が、この後また大事になってくるんです。
一同
あー!
井上
最後まで大切なセリフとして、演じたいなと思っているセリフです。

泣けてしまうほど温かな紬家の親子関係

――閑話休題で、6人以外の登場人物の名シーンとしてはいかがですか?
井上
やっぱり凛太郎くんのお母さん(紬杏子)が……。
戸谷
僕も同じ!お母さんのシーンは涙出ました。「もう歳かしら」って。
山根
そこ! きっとみんな同じですね。あと「優しいあの子のことを誰か見つけてくれないかなぁ」も。とにかく日笠(陽子)さんのお芝居も素晴らしくて、第9話の『金髪とピアス』は特に良すぎました。しかも凛太郎くんは凛太郎くんで、わざわざ「ありがとう」と言いにくるじゃないですか。良い息子すぎます。
井上
凛太郎くんって、ああやってお母さんに何回も「ありがとう」って言うんですよね。そういうふうに育てたお母さんがスゴい。
中山
「何で俺に会いたかったんだろう。桔梗なのに」とか、宇佐美たち3人には相談しないことも、お母さんには相談していて。普通お母さんにこそ言えない気がするので、素敵な親子関係ですよね。
山根
息子の言葉を受けての「鈍すぎるだろ……」も良かった(笑)。
戸谷
凛太郎も良い子だ。
中山
第11話で、お父さんにピアスを開けてもらうところも、めちゃくちゃ良かったです。
山根
ケーキを作るときに「食べた時にどんなことを思ってほしい?」と聞いたり、お父さんも(紬圭一郎)また素敵で。
中山
 「……上出来だ」がカッコよかったです。
――ありがとうございました! 次回の座談会では、翔平、朔、絢斗、昴の4人の名シーンと、収録エピソードを伺えればと思います。