和栗薫子役・井上ほの花&保科昴役・山根 綺 対談インタビュー
芯を持ち、周りを見ている薫子と、重なる井上さん
――初めに山根さんと『薫る花は凛と咲く』の出会いから聞かせてください。
- 山根
- 『薫る花』はオーディションのお話をいただく前から、原作コミックを第5巻くらいまで読んでいた作品でした。それこそ最初は恋愛ものの少女漫画かな?と思っていたのですが、読み進めていくうちに、これは思っていた漫画と違う......!と感じたんです。思春期の頃にみんなが感じるモヤモヤや、将来への不安、学生ならではの心の動きを、とても繊細に描写していて、そのリアルさにも惹かれる作品だなという印象を受けました。
- 井上
- 分かる! 心情描写がすごく繊細だよね。
――原作の三香見サカ先生とは何かお話をされていますか?
- 井上
- 昴の登場回が第3話だったから、綺ちゃん(山根さん)は第1話の収録後のお食事会には、参加できなかったんだよね。
- 山根
- そうなんです。だから先生とは軽くご挨拶をさせていただき、あとは『マガポケ』で最新話が公開されたタイミングでお会いできると、その都度「最新話も最高でした!!」とお伝えしています。
――それでは山根さんは和栗薫子の魅力をどのように捉えていますか?
- 山根
- 薫子の魅力は、折れないところです。
- 井上
- えっ! 私も中山さんとの対談で、同じことを言ったの!
- 山根
- 本当!? とにかく薫子って、まっすぐなんですよね。自分のことも周りのことも、ちゃんと信じているところがすごく素敵だなと思います。
――ちなみに山根さんからご覧になって、薫子と彼女を演じる井上さんに、重なる部分はあるでしょうか?
- 山根
- ほーちゃんとは、ここまでがっつり掛け合いのある役で共演するのは、今作が初めてなんですけど、薫子と重なる部分はかなりあると感じています。
- 井上
- えぇっ、本当!?
- 山根
- ほーちゃんも薫子みたいに、見た目はすごくほわほわしていて、お花みたいな子なんです。でも物事についてちゃんと考えているし、頭も良いんです。
- 井上
- そんなことないです!!
- 山根
- いやいや本当に!一つ面白かったお話があって、第3話の収録の合間、とある映画の話で盛り上がったことがあったんですよ。面白いと感じたかどうか、賛否両論意見が出ていて。でもほーちゃんが最後まで発言していなかったので、「ほーちゃんはどう?」と(紬杏子役の)日笠(陽子)さんが振ったんです。そうしたら「ママが『よく分からなかった』って言っていたから、私は観てないです〜!」と。それでドッと場が沸いたんです。そのスタンス、最高だね!みたいな(笑)
- 井上
- (笑)。
- 山根
- 一見ふわふわしているから、天然に見られそうだなと思うんですけど、芯をしっかり持っているのが分かりますし、自分の考えやポリシーみたいなものもちゃんと持っているんです。お仕事に対してもすごく真面目に取り組んでいて、そういう良いギャップがあるところが、薫子と似ています。それから、周りの人のこともすごくよく見ている方で。
――紬凛太郎役の中山祥徳さんも、井上さんとの対談で、同じことをおっしゃっていました。
- 山根
- 本当ですか!? そうなんです。いつも「綺ちゃんはこういうところがスゴいね!」みたいに褒めてくれるんですけど、それってちゃんと周りを見ていなければ気付かないし、そもそも出てこない言葉じゃないですか。だから周りにいる人のことを、ちゃんと大事にできる人なんだなと感じています。人のためを思って行動できる、利他的な部分も持っている子で、そこも薫子に似ているなと思いました。
- 井上
- 嬉しい〜……ありがとう!
似た者同士かもしれない凛太郎と昴に見える、薫子のタイプ!?
――続いて、保科昴の素敵だなと感じるところを教えてください。
- 山根
- 自分のことを後回しにできる人って、あまりいないと思うんです。でも昴は、薫子が幸せでいられるのであれば、自分がどう思われても、自分を100%犠牲にできるところがかっこいいなと思います。そもそも自分より大事だと思える人がいること自体、素晴らしいことですし、それくらい大事な人だったら、普通執着してしまうじゃないですか。でも昴はそうではなく、薫子の幸せを一番に考えたときの最善策はこれだと、自分を切り捨てることができる。なかなかできることじゃないですよね。
――そこまで昴が薫子のことを想って行動できるのは、どうしてだと捉えていますか?
- 山根
- 自分のすべてだからだと思います。昴の薫子への一連の行動って、最後はここに到達するんだ……という、ひとつの愛の形だと思うんですよ。小さい頃に自分を助けてくれて、ヒーローだと思えた人と、10年以上一緒にいたら、「この子がいなければ、私は生きていけない!」と、執着してもおかしくないですよね。昴にも、多少その心はあると思うんです。でもそれ以上に、薫子に嫌われてでも、凛太郎君に会わないでほしいと伝えたのは、彼女の強さの表れだと思います。
――井上さんは、薫子にとっての昴をどんな存在だと感じていますか?
- 井上
- 綺ちゃんが話してくれたように、これだけ仲が良くてずっと一緒にいたら、お互い束縛して執着してしまうかもしれないのに、「昴はどう思う?」「薫子はどう思う?」とお互い聞けるじゃないですか。そういう最終決定権を相手に委ねているところが、私はすごく素敵だなと感じます。たとえ信頼し合っている相手だとしても、相手のことが好きすぎると、これってなかなかできないと思うんです。
- 山根
- そうだよね、なかなかできないと思う。
- 井上
- 「こうしたほうがいいよ!」とか、「この人は自分のもの!」みたいに、どうしても思ってしまうと思うのに。特に昴は薫子ちゃんなしでは生きていけなさそうなのに、囲ったりしないで、「これが薫子にとっての幸せだから」と考えられる。きっと立場が逆だったとしても、薫子ちゃんも同じようにできるんだろうなと思うと、本当にこのふたりは素敵な関係性だなと感じます。
――ではそんな昴と、彼女を演じる山根さんに重なる部分はありますか?
- 井上
- 外見と中身にギャップがあるところがまずそうですし、その中身自体も、昴はけっこう綺ちゃんに似ているんじゃないかな?と思っています。パッと見強そうな子で、綺ちゃんはすごくフレンドリーで、外側は違うんですけど。でもちょっとお話ししてみると、綺ちゃんはすっごく繊細な人なんだなと感じるんです。あまり関わりがない人からは、「悩み事がなさそう!」とか言われそうな気がして。
- 山根
- わー、それよく言われる!(笑)
- 井上
- そこが昴と似ているなって。昴も見た目から、あの子は絶対強い!とか怖いとか、思われていると思うんですけど、実際には誰より優しくて、ガラスのハートを持っている人だから。そこがふたりは一緒なんじゃないかな?と感じました。
- 山根
- そのとおりだと思います。私も第一印象では明るくてノリが良くてテンションが高い、100%陽の人間と思われがちで。でも本当はそんなことなくて、根はちゃんと暗いですし、学生時代は自分のことが好きじゃない時間がすごく長かったんです。だからこの先の物語で、昴が自分の心情を吐露するシーンは、まさに高校生のときの私みたいだな……って。そこはすごく自分と似ているなと感じました。
似た者同士かもしれない凛太郎と昴に見える、薫子のタイプ!?
――第5話までの物語を振り返って、薫子と昴のシーンで特に印象に残っているところは?
- 山根
- 私は第4話の凛太郎くんとふたりで話すシーンです。というのも、私が特に多くいただいたディレクションに、「泣きの芝居には行かないで」というご指摘がありまして。特に昴が自分を犠牲にしているところだと、悲しい、悔しい……といった気持ちから、演じながら感極まってしまいそうになるんです。ここでの凛太郎くんとのやり取りも、泣いてはいなかったのですが、「それだと泣き落としにいっているように聞こえてしまう」と。同様に第5話ラストで薫子に「紬くんと、話したの」と打ち明けるセリフも、最初はちょっと辛そうで泣きそうに演じていて。これで薫子に嫌われてしまうかもしれない、今この瞬間ふたりの友情が終わってしまうかもしれない……ということも覚悟して、昴は薫子を呼び出しているわけで、そこで負けそうになってしまう自分がいて、泣きそうになったんです。でもディレクションで「昴はそこで泣きにいかないよ」と言われて、それがすごく印象に残っています。
- 井上
- 私は第3話の図書館で、凛太郎くんといるのを見られてしまったときの、昴の「…薫子? その人 誰?」がすごく印象的でした。薫子ちゃんとしてもやましいことがないのは分かっているのに、自分のことをなんでも知っていて信頼し合っている昴ちゃんから言われると、本番でも本当にドキッとしてしまったんです。ちょっとマズいかも……!って。
- 山根
- そうだったんだ!(笑)
- 井上
- そうそう! やましいことはしていないけど……どうしよう!?と、このセリフを聞いて感じたのを、よく覚えています。
――昴は薫子に見せる優しい顔と、男子に見せる厳しい顔のギャップがありますよね。
- 山根
- そうですね。その振り幅をどこまで表現するかというのも、最初は難しかったです。どこまで怖くしていいのか、ドスをきかせて低めに言っていいのか……。今ほーちゃんが挙げてくれたセリフも、薫子の前でどれだけ自分を取り繕って喋るべきか?と。本心から真剣に「その人 誰?」と聞くのか、「大丈夫、気にしてないよ!」という気持ちを滲ませて我慢しながら、「その人 誰?」と明るめに聞くのか……。凛太郎くんみたいな人は、今まで現れたことがなかったわけで、昴自身、どこまで薫子に突っ込んで聞いていいのか、図りかねていたと思うので、その温度感が難しいセリフでした。
- 井上
- 薫子ちゃんからすれば、昴が男子に厳しいのは当たり前なことですし、ここのセリフも男子に接するいつもどおりの言葉だと分かっていたから、ドキッとしました。凛太郎くんは昴が思うような人じゃない、でも昴のことも理解しているからその問い掛けも分かる……って。でもここは本当に難しいところだよね。人それぞれ、解釈が違うセリフなのかもな?とも思います。
- 山根
- 確かに凛太郎くんと薫子の雰囲気を見て、いつもと違くないか……?と、昴がどこまで感じ取ったのか。いつもだったら「私が守るから大丈夫」で終わるのに、「すっごく優しい人だったよ」と言う薫子の柔らかな笑みを見て、今まで感じたことのないこのざわざわした気持ちはなんだろう……なんだか嫌な感じがするな……と、昴は感じているんじゃないかな?と受け取りました。
――そのほかに第5話までで印象深いシーンやセリフは?
- 山根
- 先ほども挙げた第4話で、凛太郎くんとカフェで喋ったときの「ごめん できない」です。中山さんはどう出してくるんだろう?と、収録を楽しみにしていたところで、本番「これだ!」と思うセリフになっていました。あれを聞いて、ちゃんとちょっと傷付いて、でも心のどこかでそうだよね……と納得できた一言で、すごく自分の中に残っています。
- 井上
- 昴は凛太郎くんと会ったことや話したことを、薫子ちゃんに言われてしまうんじゃない
か? そうしたら薫子にどう思われるだろう……と、ずっと不安に思っていたじゃないですか。でも凛太郎くんから薫子ちゃんに言うことはなくて。そんなふたりの関係性を薫子ちゃんの立場から見ていた私は、すごく嬉しい気持ちになりました。よく考えると、凛太郎くんと昴って、ちょっとだけ持っているものが似ているのかも……? もちろんそれぞれ違うんですけど、どちらかと言うと内に入るタイプだったり、ちゃんと人のこと、特に薫子ちゃんのこととなると、自分自身で考えられるところだったり。それにふたりとも食べたり喜んだりしている薫子ちゃんを見て、可愛いって思ってくれるし、そういう薫子ちゃんを可愛いと思うポイントも同じような気がします。そう思うと、薫子ちゃんのタイプも、意外と分かりやすいのかな?
- 山根
- 確かに、似た者同士なのかもしれませんね!? 見た目で嫌な思いをしてきたところも、一緒ですし。自分と似ている人だから、お互いが出した答えにも、どこかで分かっていたというか、「そうだよな」と思って納得できるのかもしれません。
難しい収録も、お互いの存在があったから乗り越えられた
――収録現場でのエピソードもぜひ教えてください。
- 井上
- この間は音響監督の濱野(高年)さんも交えて、車の運転についてみんなで話したよね? それも1時間くらい立ち話で。男性脳と女性脳で、運転の仕方が違うんだということに気が付きました(笑)。
- 山根
- 私とほーちゃんは免許を持っているんですけど、駐車が苦手だったりして、「だから、これがこうで!」と言われても「それが分からないんですよー!」って(笑)。
――お互いの存在に助けられた出来事はありますか?
- 井上
- 綺ちゃんにはいつもすごく助けられています。例えばこの先の回で出てくるあるセリフにいただいたディレクションについて、頭では分かっていても思ったとおり声に乗せられず、何回やってもできなくて「また後で録りましょう」となったところがあって。ディレクションで言われていることも、それを受けて自分がどうしたいかも分かっているのにできなくて、どうしようどうしよう……となってしまったんです。そのときに綺ちゃんが「きっとこういうことだと思うよ!」と、噛み砕いて説明してくれるだけでなく、「こういう感じじゃないかな?」と実際に声に出してくれて。そのおかげで掴むことができて、リテイクは1発で決めることができました。あのとき綺ちゃんがいてくれなければ、私の心もやられていたと思います。
- 山根
- そんな、全然大したことはしていないのに……! それこそ私は次の第6話なんて、ほーちゃんと一緒じゃなければできなかったなと思っていて。というのも、家でひとりで台本を読んでいたときは、薫子へのある一連のセリフがなかなか掴めず、どう演じたらいいんだろうとずっと迷っていたんです。でも収録当日、テストで初めて掛け合ってみたら、あまりにもやりやすくて、掛け合いってこうだよな!と実感しました。ほーちゃんの薫子がとにかく素晴らしくて、それを受けて薫子を包み込む気持ちにちゃんとなれて、昴のセリフをすんなり言うことができたんです。一緒に録れて、本当に良かったです。
――ではそんなおふたりが、もしも高校のクラスメイトだったとしたら、どんな関係を築きそうでしょう?
- 山根
- 私がずっとほーちゃんに引っ付いちゃうと思います。
- 井上
- 本当!? 私けっこうプラプラしている感じだよ?
- 山根
- (笑)。多分隣の席になったのをきっかけに、1年間ずっと仲が良い感じだろうなって。
- 井上
- 嬉しい! 実はスタッフさんから最初の頃、スタジオ内が静かすぎて、少し心配されていたんです。だから第3話から綺ちゃんが来てくれて、本当に助かったし、嬉しかった。
- 山根
- こちらこそ、そう言ってもらえて嬉しいです!(笑)私がみなさんを繋ぎますから、任せてください!!
- 井上
- 頼もしいー! きっと私が影みたいに、綺ちゃんについていっちゃうと思います。
- 山根
- あはは! 途中から「一緒にご飯食べよ〜」とすら言わずに、自然と一緒に食べ出しそう(笑)『薫る花』でほーちゃんと共演できて、本当に良かったです。
――『薫る花』は凛太郎と薫子が出会うことによって物語が始まりますが、最近ご自身が何か出会った物・事・人があればお教えください。
- 井上
- 元々お花が大好きで、自分でもよく買うんですけど、すぐに枯れてしまうのがもったいないなあと思っていて。そこで『薫る花』のアフレコが始まった頃から、プリザーブドフラワーじゃないですが、お花をレンジでチンして乾燥させて、ノートに貼るようになりました。そのお花についてや、お花を見つけたときのことも、そこに書くんです。お花を買うときって、「今日こんなことがあって、嬉しかったからお花を買おう!」とか、ふらっと入ったお花屋さんがすごく素敵で「このお花が良いと思って買ったけど、これって何かに導かれたのかな?」とか、そういう何かしらの気持ちがあるんですね。だからそれを忘れないようにしておきたくて、始めてみました。
- 山根
- 素敵!まさに「薫る花」だね! 私は炊飯器を買いました。炊飯器の話でも、収録現場で盛り上がったことがあったんですけど。これまではお米があったら絶対炊いてしまうから、糖質を摂りすぎて体型が変わらないように……という考えで、実は炊飯器を持っていなかったんです。でもこの2年程、毎日のようにおにぎりを買って食べていて、「私って、お米が好きなのでは……?」と気が付いて。美味しいお米ってどんな味なんだろう?というのも気になり始め、少し良い炊飯器を買ってみました。それでお米屋さんで良いお米も買って、炊き方もしっかり調べて炊いてみたところ、あまりに美味しすぎて! お米って飲み物みたいだな!?と本気で思いました。今はそうして炊いたお米を握って、小腹満たし用に現場に持って行くのにハマっています。ご飯のお供やおにぎりの具を集めるのも、すごく好きです。
- 井上
- そうだった! どの炊飯器を買ったか聞いたんですけど、確かに良さげなやつでした!
- 山根
- 炊くのに1時間かかるので、そこだけが大変です(笑)。
- 井上
- 最近お米も高いしね?
- 山根
- そうなんだよー! 今後も美味しくいただこうと思います。
――最後に第6話からの見どころを踏まえて、一言メッセージをお願いします!
- 山根
- 第6話は昴が頑張る回になります。私もこの山場に向けて彼女と向き合ってきましたし、スタッフさんたちと時間をかけて収録し、たくさんのこだわりが詰まったエピソードになっているはずです。ぜひ最初から最後まで、一言一言を感じ取っていただけましたら嬉しいです。
- 井上
- 第6話に出てくる薫子ちゃんと昴のやり取りが、個人的にも大好きなんです! みなさんもどうぞ楽しみにしていてください。またここから先は、大きなイベントがぽんぽん続いていきますので、そこでのみんなの心の動きが伝わったらいいなと思います。『薫る花』は観る方それぞれでいろんなことを感じられる作品だと思いますので、その気持ちをどうか忘れず、何か心に残るものがある作品になっていたら嬉しいです。引き続き、薫子ちゃんや昴や、みんなの成長を見守ってください!