紬凛太郎役・中山祥徳 ×
和栗薫子役・井上ほの花 対談インタビュー
「自分はオーディションに受からないだろう……」同じ想いだったふたり
――テープオーディション、その後のスタジオオーディションを経て、おふたりは凛太郎役と薫子役に選ばれたとのことですが、そんなオーディション時の思い出を聞かせてください。
- 中山
-
『薫る花は凛と咲く』は元々、SNSで見掛けて、物語の導入がめちゃくちゃ好きだな!と、少し読んでいた作品だったんです。それからしばらく経ったときに、オーディションのお話をいただき、「あれ……? この作品、知ってる! これをアニメ化するの!?」というところからのスタートでした。
- 井上
-
私もオーディションのお話をいただく前から、『薫る花は凛と咲く』というタイトル自体は知っていたんです。でも人気の作品ですし、正直、自分は受からないだろうな……とも思っていて。
- 中山
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僕も一緒です!
- 井上
-
一緒ですか!? だからスタジオオーディションは、とにかく楽しくできたらいいな!と、例えるなら記念受験のような気持ちでした。作品にのめり込みすぎてしまうと、そのぶん落ちたときが悲しすぎるから……。
- 中山
-
分かります。僕もオーディションのときは、凛太郎のイメージがうまく湧かなかったんです。だからとにかく、自分のまんまでやってみよう!と思いながらも、きっとダメだろうな……と、手応えはありませんでした。
- 井上
-
えっ!? 中山さん、凛太郎くんのまんまだなって思いますよ!
- 中山
-
本当ですか? だから選んでいただけて、自分としてはびっくりなんです。「凛太郎はこれだ!」という指針をまだ掴みきれていないのに、周りの方には「役に合っているね」と言っていただけるので。
――オーディションの際、スタッフの方からあったディレクションなど、何か覚えているやり取りはありますか?
- 中山
- 僕はお芝居について、「もっと内に入って」と言われました。それ以外のことだと、僕オーディション当日、凛太郎よりいかつい髪型をしていたんですよ。マンバンヘアという、後ろは1〜2mmで刈り上げて、トップの髪は結うというスタイルのものなんですけど。それでスタジオに入って掛けられた第一声が、「宣材写真と違うね?」で、そこで「あ……終わった……」と思いました(笑)。
――今と印象が違っていらっしゃったのですね!
- 中山
- はい。合格後に、事務所から「今後は登壇イベントもあるし、『薫る花』は高校生の青春モノだから……」と助言をいただいて、今に至ります(笑)。
- 井上
- (笑)。私はオーディションで、「もっとこうしてください」といったディレクションをほとんどいただかなくて、とても楽しく薫子ちゃんを演じることができました。セリフを言いながら、自分の心がちゃんと動いているのも感じられて。ただ終わったあとは、「ディレクションがあまりないって事は薫子ちゃんには当てはまっていなかったんだな…。」と不安だったんです。それもあって、合格と聞いたときはびっくりしました。
――改めて原作コミックを読んで、『薫る花』のどんなところに魅力を感じましたか?
- 井上
- キャラクターたちの心の動きが、とても繊細に描かれているところが素敵ですよね。ここまで丁寧に描いている作品は、なかなかないのではと思いました。
- 中山
- それにこのふたりの関係だけで終わらないところも、いいですよね。友達、両親……と、それぞれの人との間に、いろんな感情が見えるところが面白いです。
井上 まさに凛太郎くんと薫子ちゃんのふたりだけで物語が動くのではなく、みんな主人公!というか、周りの人のことも置いてけぼりにしないのもいいですよね。
――ちなみに原作の三香見サカ先生とは、収録が始まるにあたって、何かやり取りをされましたか?
- 中山
- 三香見先生は第1話の収録にいらっしゃっていて、そのあとの決起会でも、「凛太郎にピッタリでした!」とおっしゃってくださいました。自分では「大丈夫かな、凛太郎をちゃんと表現できているのかな……」とずっと不安だったので、三香見先生がそう言ってくださるのなら良かった!と、ほっとしたのを覚えています。
- 井上
- そう言っていただけると、安心しますよね。先生はすごくふんわりとした雰囲気の優しい方で。私も人気作ですし不安な気持ちが大きいなかで、「オーディションのときから、素敵な薫子でした」と言っていただけて、「良かったぁ……!」と心が少し落ち着きました。それに「もっとこうしてください」よりも、「薫子を演じてくれて、本当にありがとうございます」と言ってくださるので、こちらが感謝しなければいけない立場なのに、逆に感謝されちゃった……!と思いました
- 中山
- 3月のAnimeJapanのときには、イラストも寄せてくださったじゃないですか? PVの最後に入っている僕らふたりの告知ゼリフが、収録時なかなかタイミングが合わずに苦戦した……という出来事があったんですけど、その様子を凛太郎と薫子で描いてくださいました。後ろには、それを見ている4人もいて。
- 井上
- お忙しいはずなのに、本当にお優しいですよね!
初めて臨んだ収録では、当初、恋愛経験値高めな凛太郎&薫子に!?
――それでは凛太郎と薫子、ご自身が演じる役柄の魅力や尊敬できるところを聞かせてください。
- 中山
- 凛太郎はやっぱり素直なところです。それにカッコつけないところも、素敵だなと思います。何より大人になった自分が、改めて大事だなと気付かされたのは、感謝と謝罪の言葉をちゃんと相手に言えるところ。本当に凛太郎は良い子だなと思いますし、彼を演じながら、自分ももっと丁寧に日々を暮らしていこうと考えるようになりました。
- 井上
- 薫子ちゃんは可愛いだけではなく、芯がしっかりあって、そこは曲げないところが素敵だなと思います。私は「こうしたい!」という意見を持っていたとしても、「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」と言われると、ポキっと折れて流されてしまいがちなんです。だから自分の芯を大切にしている薫子ちゃんは、素敵だなと感じます。それでいて見た目はふわふわとして可愛いという、ギャップも魅力的ですよね。
――では収録を重ねてきたなかで、役柄とお相手に共通点を感じる部分はありますか?
- 井上
- ご自身は凛太郎くんのイメージがあまり湧かないとおっしゃっていたからこそかもしれませんが、すごく真面目なところが、凛太郎くんに似ているなと私は感じます。アフレコ中も中山さんは、「このセリフはどうやろう」「ここって、こっちの方向がいいですか?」とスタッフさんともやり取りしながら、毎話たくさん考えていらっしゃるんです。私はあまりそれができないというか、音響監督の濱野高年さんから「こういう方向にして」とディレクションをいただいても、あわあわしてしまうことが多いなと自分では思っているので。だから「もっとこうだよな!」と考え抜いてお芝居できるところがスゴいですし、凛太郎くんも内でいろんなことを考えている人だから、そこがふたりは似ています。
- 中山
- なるほど(笑)。それで言うと、井上さんは本当に等身大の薫子という感じの方です。
- 井上
- ええーっ、本当ですか!?
- 中山
- うん。今こうしてお話を聞いていても、めちゃくちゃ人のことを見ているし、考えているじゃないですか。薫子もふわふわしているけれど、可愛いだけじゃなくてちゃんと芯の部分があって、プライドも持っている。だから今、井上さんはちゃんと薫子のまんまなんだなと思いましたし、だからディレクションも全然ないんだということが分かりました!
- 井上
- それは嘘です! 私も「もっとこうして」って、いただいていますよ!!
- 中山
- もちろん演出的な部分では、みんなもらうものだけど(笑)。
- 井上
- 違います、凛太郎くんはセリフ量が圧倒的に多いんです! モノローグも普通のセリフもたくさんあるので。
- 中山
- 確かに凛太郎はモノローグが多くて……。いや、こうやって、相手を不快にさせない言葉選びをされる方なんですよね。薫子と同じで、愚痴とか悪口も言わなさそうです。
- 井上
- 全然言いますよ? 今日だって「めちゃくちゃ暑い〜……」とか。
- 中山
- それは誰も傷つけていないし、悪口じゃないから!
- 井上
- 電車に乗っているときも「誰か降りてくれたら、座れるのになあ」とか、思いますから!
- 中山
- (笑)。
――第1話の収録エピソードを教えてください。
- 井上
- 「今の薫子ちゃんは、彼氏3人目みたいだね」と、第1話で言われてハッとしたのを、すごくよく覚えています。多分落ち着きすぎて恋愛経験豊富な感じというか、凛太郎くんとも付き合ったあとみたいな雰囲気が出てしまっていたのかなって。自分が原作を先まで読んでいることで、今後の薫子ちゃんや物語の展開をインプットしていたから、というのも影響していたのだと思います。それで「もっと声が裏返っちゃうようなピュアな感じでやってください」とディレクションをいただき、凛太郎くんとお話するのに慣れるまで、あわあわと声が上擦った薫子ちゃんになっています。そこは中山さんも同じだったかと思います。
- 中山
- そうですね。僕も凛太郎の優しさや、体格から来る包容力を出したいなと思っていたのですが、ケーキをふたりで食べるシーンで、「女の子と接するのに慣れすぎている」といただきました。
- 井上
- 凛太郎くんはほっぺがポッとなったりはしますけど、あわあわする姿を見せることはあまりないから、そこも難しいですよね。
- 中山
- そうなんです。内心ではわたわたしているけれど、外にはあまり出さないから、そこは難しいです。
――第1話のふたりのシーンで、ほかに印象に残っているところは?
- 井上
- 薫子ちゃんが不良に絡まれたときに、体格差も相当あって怖いだろうに、凛太郎くんのことを「知ろうともしないのに、好き勝手言うのはやめて頂けますか? 不愉快です」とちゃんと伝えられるのが印象的でした。ここはオーディションでも演じていたシーンで、薫子ちゃんに見える強さがカッコいいなと思いましたし、収録でまた演じることができて、何だか私も誇らしい気持ちになりました。
- 中山
- そのシーンで凛太郎が薫子を庇ったあとに、介抱してもらいながら「俺のせいで、巻き込んじまってすみません!」と謝りますよね。それに対して薫子は、「あなたのどこが怖いのか、さっぱり分からない」「こんなに優しい人なのに…」と伝えてくれる。ここだけ見ると、恋が始まりそうじゃないですか?でもディレクションでは、「そうじゃない。ここでの凛太郎は、罪の意識しかない」といただきました。だからこの場面は、浮き足立っていく薫子に対して、どんどん沈んで内に入っていく凛太郎という、正反対なふたりが印象的です。
日笠陽子さん演じるお母さんが、また素敵なんです!
――それでは第1話のなかでも、凛太郎と薫子以外のシーンで好きなところは?
- 中山
- まず凛太郎のお母さんである杏子さんが、とにかく良いですよね!
- 井上
- 日笠さんのお芝居も、とても素敵で。更に面白くもあって!
- 中山
- 本当に。薫子が2回目にお店を訪ねてきたときに、以前逃げたのは凛太郎のことが怖かったからじゃないと分かるじゃないですか。そこで思わず凛太郎が大声を出してしまうんですけど、後ろで接客中のお母さんが「りんたろう うるさい…」とぼやくセリフに合わせて、日笠さんが入れられた「カーッ!!」と怒るアドリブが好きです(笑)。お母さんを演じるにあたっては、「学生たちがみんな繊細な表現をしているなかで、お母さんだけわりとコメディタッチだから、世界観的にどう演じよう?」と、日笠さんも悩まれていました。
- 井上
- だからこそ素敵ですよね。ここでお母さんが凛太郎くんに寄り添いすぎてしまうと、また違った男の子に成長していたんじゃないかなと思うんです。近すぎない距離感で、でも心の中ではちゃんと凛太郎くんのことを考えていて、大切に育てられてきたのが伝わってきます。凛太郎くん、反抗期がありそうな見た目ですけど。
- 中山
- ねえ?でもなさそうだもんね。
- 井上
- なさそうですよね。それから、千鳥の3人もいいですよね。学校の先生とも仲が良くて、高校生の男の子って、そういえばこうだったかもと思ったりしました。桔梗側にはない先生と生徒の距離感が見られるし、“みんな違ってみんないい”な男の子たちだなと感じます。
- 中山
- やんちゃな学生たちではあるけれど、生徒の自主性を重んじる校風ですよね。
- 井上
- というか、男の子が4人いて、キャラクターがひとりもかぶっていないのも、すごくないですか!?自分の高校時代を振り返ると、似た者同士でグループを作りがちだった気がします。
- 中山
- 確かに。その点この4人は、全員それぞれ個性がありますね。
- 井上
- 例えば凛太郎くんと朔くんとか、普通であればちょっとキャラクター的に重なりそうかな?と思うところを、三香見先生はそれぞれ全然違う人として描いていらっしゃるから、スゴいなと思いました。
- 中山
- うんうん。人を拒んでいるはずの凛太郎が意外と軸になって、そこにみんなが集まっているんだなというのも感じました。
――ちなみにおふたりはどんな学生時代を送っていましたか?
- 中山
- 僕は千鳥みたいな、ちょっとおバカな高校に通っていました(笑)。クラスでの立ち位置も、特に発言権があるとか目立つとかいうことはなく、ひっそりと4人くらいのグループで、楽しくやっていましたね。
- 井上
- 私も頭は良くない高校で(笑)、3年間、同じクラスでした。
- 中山
- へー!クラス替えがないの、珍しいですね?
- 井上
- そうなんです。当時すごく青春を感じていたというわけではないけれど、高校3年生になると、毎日授業が午前中の4時間しかなくて。それで学校が終わったらみんなで海に行ったり公園に行ったり、いつも遊びに行っていました。ただそれも私たちの代で終わりだったようで、ラッキーでした!
- 中山
- 青春だなあ。羨ましいです。僕は愛知県出身で、放課後遊びに行く場所といえば、カラオケくらいしかなかったんですよ。8時間歌って1,000円とか、すごく安くて。
- 井上
- ソフトクリームも食べ放題だったり?
- 中山
- そうそう!ビリヤードやダーツもあって、学校終わりはカラオケに行くのが定番でした。それからドラムをやっていたので、バンドメンバーを探していた友達の誘いを受け、仮入部状態のまま軽音部に入り浸っていましたね。試験期間は午前中で終わるから、みんなで部室に荷物を置いて、財布だけ持って、制服のままラーメンを食べに行き、帰ってきたらバンド練習をして……。今思うと、それも青春だったなと感じます。
――素敵なお話をありがとうございました! 最後に次回第2話からの見どころを踏まえて、一言メッセージをお願いします。
- 井上
- ここからも見どころがありすぎますよね!
- 中山
- 全部が見どころになりますが、なかでも凛太郎に関しては、第2話でちょっとだけ意識が変わる様子が見られるので、そこにご注目ください。第2話以降も、いろんなきっかけからどんどん変化し成長していく凛太郎を、見守っていただけますと嬉しいです。
- 井上
- 薫子ちゃんとしては、千鳥と桔梗がバチバチしているなか、今後登場する幼馴染の昴のことも外せません。彼女たちふたりの関係性にも、ぜひ注目していただけたらなと思います。それぞれの気持ちの変化を大切に、丁寧に描いていく、TVアニメ『薫る花は凛と咲く』を、引き続きどうぞよろしくお願いします!